最近、「AIクローラー(GPTBotなど)」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、従来の「検索クローラー(Googlebotなど)」と具体的に何が違うのか、正しく理解できているでしょうか。
同じWebページを訪れていても、両者が求めているもの、そしてデータの処理フローは全く異なります。今回は、その決定的な違いを概念図と共にお伝えします。
1. 全体フローの比較:思想の違いが一目でわかる
検索クローラーは「人間が読む文書」を解析し、AIクローラーは「システムが扱う知識」を抽出します。
【検索クローラー】(HTML中心)
Googlebotなどの従来型は、まず「人間が見ている画面」をコードレベルで再現しようとします。
URL → HTML取得 → DOM解析 → 構造化データ(JSON-LD)抽出 → 意味付け(schema.org) → インデックス登録 → 検索順位決定
【AIクローラー】(意味データ中心)
学習用やRAG(検索拡張生成)用は、構造化された「意味」を最短距離で取りに行きます。
URL/API/Feed → JSON/テキスト取得 → 意味正規化 → メタデータ付与 → Embedding(ベクトル化) → 学習・AI回答生成
結論:検索は「HTML」を読み、AIは「意味(データ)」を読みます。
2. 挙動の決定的な違い(比較表)
両者の特性を一覧表にまとめました。
| 観点 | 検索クローラー | AIクローラー |
|---|---|---|
| 主目的 | 検索結果の生成(インデックス) | 学習・回答生成(推論) |
| 中心データ | HTML | JSON / テキスト |
| HTMLの役割 | 主役(レイアウトや構造が重要) | 補助(テキスト抽出の源泉) |
| JSON-LD | 非常に重要(検索結果を豊かにする) | 補助〜高品質な入力ソース |
| API利用 | ほぼ使わない | 積極的に使う(効率的なため) |
| 意味理解 | schema.org(定型ルール)依存 | 構造 + 文脈(LLMによる理解) |
| ノイズ耐性 | 低い(不要なタグで混乱することも) | 高い(文脈から本質を抽出できる) |
| robots.txt | 厳格に遵守 | 実装依存(だが重要性は増している) |
3. HTML・JSON・JSON-LDの扱い方の違い
同じデータ形式でも、クローラーによって「ありがたみ」が異なります。
検索クローラー視点
- HTML:◎◎◎(必須) これがないと始まらない。
- JSON-LD:◎◎◎(重要) ページの内容を正しく伝えるための公式な「名刺」。
- JSON:△ ページ描画に必要なもの以外はあまり見ない。
AIクローラー視点
- JSON:◎◎◎(至高) ノイズがなく、最も効率的に情報を吸収できる。
- HTML:△ テキストを取り出すための「殻」のような扱い。
- JSON-LD:○〜◎ データの正確性を補強してくれる高品質なソース。
4. 【具体例】同じWebページをどう見ているか?
例えば、あるニュース記事のページに「本文HTML」「JSON-LD」「内部API」の3つが存在する場合、それぞれの動きはこうなります。
検索クローラーの場合
- まず HTML を読み込む。
- 見出し(h1)や本文の構成から、何についてのページか推測する。
- JSON-LD を見て、「著者は誰か」「公開日はいつか」という確証を得る。
- APIなどは基本的に無視する。
AIクローラーの場合
- もし API(JSON) が叩けるなら、そこから純粋なテキストデータを優先取得する。
- なければHTMLから 本文テキスト だけを綺麗に抜き出す。
- JSON-LD を参照し、メタデータ(要約やカテゴリ)として補強する。
- HTMLの装飾などはノイズとして削ぎ落とす。
同じページでも、見ている「入り口」と「抽出対象」が違います。
5. なぜこの違いが生まれたのか(設計思想)
この挙動の差は、インターネットに対する捉え方の違いに由来します。
- 検索クローラーにとってのWeb
- 「HTML文書の集合体」 である。
- 人間がブラウザで検索し、ページを訪れる体験を最適化することがゴール。
- 「どこに何が書いてあるか」という公平性と再現性が重要。
- AIクローラーにとってのWeb
- 「巨大な知識ソース(データベース)」 である。
- AIが情報を咀嚼し、要約・推論してユーザーに回答することがゴール。
- 「何が書かれているか」という情報の純度と正規化が重要。
6. まとめ:これからのWeb制作に求められる視点
最後に、この違いを一文で表すならこうなります。
「検索クローラーは『ページ』を見に来る。AIクローラーは『意味』を取りに来る」
Webサイトを構築する際、私たちは以下の3つのレイヤーを意識する必要があります。
- HTML: 人間のため、そして検索エンジンのため。
- JSON-LD: 検索エンジンに正しく意味を伝える「翻訳文」。
- JSON(API): AIが最も効率よく知識を吸収できる「機械専用の食事」。
検索にもAIにも強いサイトを目指すなら、HTMLの美しさだけでなく、「データとしての構造化」がいっそう重要になっていくでしょう。